文化

これからの時代、事務所は小部屋方式で!

中国でも日本の会社事務所は何処も大部屋方式であった。しかし中国の会社は殆どが欧米式に小部屋事務所方式であった。ふーん、と思いながら、同時に欧米のライバル会社とも付き合いながら過ごしているうちに、こんな事に気が付いた。「日本の会社も小部屋事務所方式にすべきだ」と。

欧米を中心とした個室事務所に比べ、日本式大部屋事務所は、プライバシーの欠如、周囲がうるさくて集中が難しいなどの欠点も有るが、社内の意思疎通が素早く行われ、関係者の相互理解、共通目標の高いレベルの理解など、良いところが沢山有り、これが日本の強さの源の一つとまで言っている人がいる。確かに、嫌でも隣の人が何を話しているか聞こえてくるし、大部屋に居るだけで、その事務所の全体としての状況、流れは把握できると言えよう。

しかし、駐在して見て気が付いたが、「大部屋主義は、意思の疎通が悪い」のだ。

確かに、本社とか中心となる事務所に大勢で居る場合、隣の部屋の人にも書類で情報伝達を行う事が当然となっている欧米個室方式に比べ、大部屋事務所は情報伝達が早い。極端な話し、急ぎの時は大きな声で、わめけば全員に伝わる。この素早さは圧倒的である。
ところが、海外駐在事務所で働いていて気が付いたが、本社からの情報が少なく、非常に分かりにくいのだ。情報の洪水の様な本社に比べ、まるで絶海の孤島に居るような気すらする。極端に言えば、本社が「今何やっているのか?」「どうなっているのか?」分からない。指示が来ても「結局、何をすれば良いのか?」分からない。

大部屋に住む人間は、普段何もしなくても情報が流通する状況に居る為、その外に居る人間、それが重要な関係者で有れば有るほど、「基本的な事は耳にして把握している」思い込みで連絡してしまう。その為、連絡の内容がもんぎりで説明不足でになってしまう。ところが連絡を受け取る方は、それ以外殆ど情報がない為、よく分からない、所謂「隔靴掻痒」の状態になりイライラがつのる事になる。
普段から書信で情報を伝える訓練が殆ど出来ていない為、連絡内容も文章が下手で、何が結論なのか、ただの意見なのかはっきり分からず、逆に誤解しかねないような文章も有る。
本来、出先は、本社の指示をもとに積極的に客に打って出なければならないのに、気が付いたら必死になって本邦本社の意見、状況を確認しようと言う内向きな行動に時間を割かれる事になる。

一方、欧米式個室主義の場合、普段は隣の人にも書信で連絡を取るなど、極めて非効率で、本社内の情報共有と言う意味ではテンションが低いと思われている。そうかもしれない。

しかし、彼らは例え海外駐在事務所などに居る人に対しても、連絡の方法は同じであり、本社の隣部屋の人が持っている情報量と、何千キロメートル離れた海外事務所の人が持っている情報量に余り差が無い。更に、普段から情報を効率的に文章にする訓練が出来ており、文章に無駄な修飾も無く、方針が明確に伝達される。したがって出先は、本社の方針方針を明確に理解し、権限の範囲ですぐさま行動に出る事が出来る。